電子カルテの操作に苦手意識を持っている看護師は少なくありません。「紙カルテの方がラクだった」「入力に時間がかかりすぎる」といった声は、特に電子カルテ導入直後の職場やベテラン看護師から聞かれます。
この記事では、看護師が電子カルテを効率よく使いこなすための操作のコツと、記録作成の時短テクニックを紹介します。苦手意識を克服して、業務効率をアップさせましょう。

電子カルテの基本を押さえる
電子カルテとは
電子カルテは、患者の診療内容・検査結果・処方薬・看護記録などをデジタルで一括管理するシステムです。厚生労働省の調査によると、一般病院における電子カルテの普及率は年々上昇しており、多くの医療機関で導入が進んでいます。
紙カルテとの違い
- 検索性:患者名や日付で瞬時にカルテを呼び出せる
- 共有性:複数のスタッフが同時に同じ患者の情報を閲覧できる
- 保管:物理的なスペースが不要で紛失リスクも低い
- 可読性:手書きの読みにくさがなく、情報の読み間違いによる医療事故を防ぐ効果がある
看護師が使う主な機能
- 看護記録の入力・閲覧
- バイタルサインの入力
- 医師のオーダー確認(指示受け)
- 看護計画の立案・評価
- 検査結果の確認
- アレルギー・既往歴の確認
操作スピードを上げる5つのコツ
1. テンプレート・定型文を活用する
多くの電子カルテシステムには、テンプレート(ひな型)や定型文を登録する機能が備わっています。よく使うフレーズや記録パターンを事前に登録しておけば、ワンクリックで呼び出せるので入力時間が大幅に短縮されます。
例えば、「バイタルサイン異常なし」「食事全量摂取」「睡眠良好」などの頻出フレーズは定型文に登録しておくと便利です。
2. ショートカットキーを覚える
マウスでメニューをたどるより、キーボードのショートカットキーを使う方が圧倒的に速く操作できます。「コピー(Ctrl+C)」「ペースト(Ctrl+V)」「検索(Ctrl+F)」などの基本操作に加え、カルテシステム固有のショートカットキーも確認しておきましょう。
3. タッチタイピングを練習する
キーボードを見ないで入力できるタッチタイピングを身につけると、入力スピードが飛躍的に向上します。無料の練習サイト(寿司打、e-typingなど)を使えば、1日10分の練習で1か月もあれば上達を実感できます。
指の運び方から体系的に直したい場合は、練習用のテキストを1冊用意して順番に進めるという方法もあります。
4. 「リアルタイム入力」を心がける
処置やケアを行ったらすぐに入力する「リアルタイム入力」を習慣にすると、勤務終了間際にまとめて記録する必要がなくなります。残業の削減にも直結するため、意識的にリアルタイム入力を心がけましょう。
5. 先輩のワークフローを観察する
電子カルテの操作が速い先輩を観察すると、自分では気づかなかった効率的な操作方法が見つかることがあります。画面の切り替え順序や入力の流れなど、実際の操作を見せてもらうのが一番の近道です。

看護記録を正確に書くポイント
SOAPを意識する
看護記録の基本フォーマットであるSOAP形式(S:主観的データ、O:客観的データ、A:アセスメント、P:プラン)に沿って記録すると、情報が整理され、他のスタッフが読んでも理解しやすい記録になります。
書き出しでいつも止まってしまうという方は、記載例が多く載っている看護記録の解説書が手元にあると迷う時間を減らせます。
5W1Hを明確にする
「いつ・誰が・どこで・何を・なぜ・どのように」を意識して書くことで、記録の曖昧さがなくなります。特に時間(いつ)と実施者(誰が)は必ず記載しましょう。
客観的な事実を書く
「痛そうだった」ではなく「NRS 6/10と訴えあり」のように、数値やスケールを用いた客観的な記載を心がけます。主観的な判断と客観的な事実を分けて記録することが重要です。
誤入力の防止策
- 入力後は必ず内容を見直す(患者名・日時・数値の確認)
- コピー&ペーストは前回記録の内容をそのまま残さないよう注意
- 別の患者のカルテを開いていないか確認してから入力する
電子カルテの記録は法的文書としての性質を持ちます。入力ミスがあっても安易に削除せず、訂正機能を使って修正履歴を残すのが原則です。
電子カルテが苦手な看護師の克服法
操作マニュアルを手元に置く
病院のシステム部門や電子カルテメーカーが提供する操作マニュアルを印刷して、デスクや休憩室に置いておきましょう。困ったときにすぐ確認できる環境を整えることが大切です。
印刷したマニュアルは重ねて置くと行方不明になりがちなので、A4のファイルスタンドに立てておくと必要なときにすぐ取り出せます。
研修・操作説明会に参加する
多くの病院では、電子カルテの操作説明会や研修が定期的に開催されています。基本操作だけでなく、アップデートで追加された新機能の説明もあるため、積極的に参加すると操作の幅が広がります。
わからないことはその場で聞く
「こんなことを聞いたら恥ずかしい」と思わず、わからない操作はその場で先輩や情報システム担当に聞きましょう。同じことで何度も困るより、一度教わった方が圧倒的に効率的です。
自宅でタイピング練習をする
電子カルテの操作スピードは、キーボード入力のスピードに大きく左右されます。自宅のPCで毎日10分のタイピング練習を習慣にすれば、1か月後には入力速度の違いを実感できるはずです。
自宅の環境を整えるなら、打鍵音が静かでテンキー付きのキーボードにしておくと、数値入力が多い看護記録の練習にも向いています。

転職時に気をつけたい電子カルテの違い
転職すると、前の職場とは異なるメーカーの電子カルテを使うことになるケースがほとんどです。
主な電子カルテメーカー
富士通、NEC、シーエスアイなど複数のメーカーがあり、画面構成や操作方法はメーカーごとに異なります。転職先が決まったら、使用している電子カルテのメーカーを確認しておくと心の準備ができます。
紙カルテの職場もある
クリニックや小規模な医療機関では、紙カルテを使い続けているところもあります。電子カルテに慣れた看護師が紙カルテに戻ると不便を感じることもあるため、転職先のカルテ環境は事前に確認しておきましょう。
電子カルテのよくあるトラブルと対処法
「入力した内容が消えた」
保存ボタンを押す前にシステムがフリーズしたり、セッションが切れたりして入力内容が消えてしまうことがあります。対策として、長い記録を入力する際はこまめに保存する習慣をつけましょう。また、テキストエディタで下書きを作ってからカルテにペーストする方法も有効です。
「患者を間違えて入力してしまった」
別の患者のカルテに記録を入力してしまうミスは、忙しい時間帯に起こりやすいです。入力前に必ず画面上部の患者氏名・IDを確認する癖をつけましょう。誤入力に気づいたら、すぐに上司に報告し、訂正手続きを行います。
「システムの動作が遅い」
院内のネットワーク混雑や端末のスペック不足により、動作が遅くなることがあります。不要なウィンドウを閉じる、ブラウザのキャッシュをクリアする、別の端末に移動するといった対処法が考えられます。改善しない場合は情報システム部門に連絡しましょう。
看護記録の時短テクニック集
SOAP記録のテンプレート例
よく使うSOAPパターンを定型文として登録しておくと、大幅な時短になります。
- バイタルサイン報告:「S:特に訴えなし。O:BT ○○度、HR ○○bpm、BP ○○/○○mmHg、SpO2 ○○%。A:バイタルサイン安定。P:引き続き経過観察。」
- 食事摂取報告:「S:食欲はありますと話す。O:主食○割、副食○割摂取。A:食事摂取量良好。P:継続して食事摂取状況を観察。」
音声入力の活用
タブレット端末を導入している病院では、音声入力機能が使えるケースもあります。ベッドサイドで観察しながら音声でメモを残し、あとから修正して正式な記録にすることで、メモの取り忘れを防ぐことができます。
自宅で音声入力を試すときは、マイク付きのヘッドセットを使うと周囲の音を拾いにくく、認識精度が安定します。
記録の「型」を自分の中に持つ
毎回ゼロから文章を考えるのではなく、「この処置にはこの書き方」という自分なりの型を持っておくと、考える時間が減って記録のスピードが上がります。先輩の記録を参考にして、自分の型を作っていきましょう。

Q&Aコーナー
Q. 電子カルテの操作が遅くて残業が多いです。改善策はありますか?
まずはテンプレートと定型文の登録を徹底しましょう。よく使うフレーズを登録するだけで入力時間が大きく短縮されます。また、処置のたびにこまめに入力する「リアルタイム入力」を意識すると、終業間際のまとめ入力が減り、残業削減につながります。
Q. コピー&ペーストで記録を書いても問題ありませんか?
基本的な情報をコピーして流用すること自体はOKですが、前回の記録内容が残ったまま保存してしまう「コピペ事故」には十分注意が必要です。コピー後は必ず内容を修正・更新してから保存しましょう。
Q. 紙カルテと電子カルテの両方を使う職場があると聞きました。大変ですか?
クリニックの中には、電子カルテと紙の記録を併用しているところもあります。二重入力になる場合は確かに手間が増えますが、電子カルテの入力ルールさえ覚えてしまえば対応できます。ダブルワークや派遣で複数の施設を掛け持ちする看護師は、両方に慣れておくとスムーズに働けます。
Q. 電子カルテの操作が苦手で転職をためらっています。未経験でも大丈夫ですか?
ほとんどの病院では入職時に電子カルテの操作研修が用意されています。また、電子カルテの基本操作はどのメーカーでも似ているため、1つのシステムに慣れれば他のシステムへの移行もスムーズです。操作が苦手だからと転職をためらう必要はありません。
まとめ
電子カルテの操作スピードを上げるコツは、テンプレートの活用・ショートカットキーの習得・リアルタイム入力の3つが柱です。記録の正確性を保つにはSOAPを意識し、5W1Hを明確にすること。
毎日使い続けることが最大の上達法です。苦手意識がある方も、一つずつコツを取り入れることで、電子カルテを味方につけることができます。

参考:メディコム「看護師に役立つ電子カルテの使い方」/デジタル化の窓口「看護師に電子カルテは難しい?」/CLIUS「電子カルテの基本的な操作方法」



