「看護計画がうまく立てられない」「個別性って言われてもどう書けばいいか分からない」——看護計画の作成に苦手意識を持っている看護師は少なくありません。
看護計画は、患者一人ひとりに合わせたケアの設計図です。基本の型をしっかり押さえれば、効率よく質の高い計画を立てられるようになります。この記事では、看護計画の基本構造から個別性の出し方、時間短縮のコツまでを解説します。

看護計画の基本構造を押さえよう
看護計画は一般的に「アセスメント」「看護診断(看護問題)」「目標」「計画(具体策)」「評価」の要素で構成されます。この流れを「看護過程」と呼びます。
1. アセスメント
患者の情報を収集し、分析・統合する段階です。主観的情報(S:患者の訴え)と客観的情報(O:バイタルサイン、検査データ、観察結果など)を整理し、何が問題なのかを明らかにします。
2. 看護診断(看護問題)
アセスメントの結果から看護介入が必要な問題を特定します。NANDA-I看護診断を用いる施設が多いですが、施設独自の分類を使っているところもあります。
3. 目標設定
目標は「長期目標」と「短期目標」に分けて設定します。目標は具体的・測定可能・達成可能・現実的・期限付き(SMART)であることが望ましいです。
例:
- 長期目標:退院時に自力で歩行ができる
- 短期目標:術後3日目までにベッドサイドで立位が取れる
4. 計画(具体策)
計画は「観察計画(OP)」「ケア計画(TP/CP)」「教育計画(EP)」の3つに分類されます。
- OP(観察計画):バイタルサインの測定頻度、観察項目
- TP/CP(ケア計画):具体的な看護ケアの内容
- EP(教育計画):患者や家族への指導内容
5. 評価
設定した目標に対して、計画が効果的だったかどうかを定期的に評価します。達成されていなければ、計画の修正が必要です。
この一連の流れは、先輩の書いたものを真似しているうちは全体像がつかみにくい部分です。看護過程を通しで解説したテキストを1冊持っておくと、どの段階でつまずいているのかを自分で確認できます。
個別性のある看護計画を立てるコツ
標準看護計画をベースに「追加・修正」する
個別性のある計画を一から作ろうとすると膨大な時間がかかります。まず標準看護計画をベースとして活用し、そこに患者固有の情報を追加・修正する方法が効率的です。
たとえば、「術後疼痛」の標準計画があれば、そこに「この患者は鎮痛剤にアレルギーがある」「言語障害があり痛みの表現が困難」などの個別事情を反映させます。
患者の背景情報を深掘りする
年齢、性別、既往歴だけでなく、生活背景、家族構成、退院後の生活環境、患者の価値観や希望まで把握することで、個別性が高まります。
入院時のアセスメントで得た情報を看護計画に反映させることが、個別性の第一歩です。

具体的に書く
「安静を促す」「観察する」といった抽象的な表現では、誰が読んでも同じケアを提供できる計画にはなりません。
- NG:「歩行を見守る」
- OK:「歩行時はナースコールで呼んでもらい、看護師が付き添って廊下を50m歩行する。ふらつきや息切れがあれば中止し、車いすに移乗する」
看護計画作成を効率化するテクニック
テンプレートを活用する
頻繁に扱う疾患や手術の看護計画テンプレートを病棟で共有しておくと、計画作成にかかる時間を大幅に短縮できます。
クリニカルパスと連動させる
クリニカルパスが適用される患者の場合は、パスに看護計画の要素が含まれているため、個別の看護計画はパスからの逸脱項目に絞ることができます。
カンファレンスで計画を共有・修正する
一人で抱え込まず、チームカンファレンスで計画の妥当性を話し合うことで、抜けや漏れを防ぎながら効率的に計画を修正できます。
看護計画は「完璧に作ってから実行する」よりも、「まず作って実行しながら修正する」方が実践的です。評価と修正を繰り返すことで、計画の精度は自然と上がっていきます。
よくある失敗パターンと改善策
失敗1:問題が多すぎて計画が膨大になる
患者の問題を全て列挙すると計画が膨大になり、実行不可能になります。優先度の高い問題に絞って計画を立てることが重要です。優先順位はマズローの欲求階層やABCDEアプローチなどを参考にしましょう。
失敗2:目標が抽象的すぎる
「痛みが軽減する」「安楽に過ごせる」では、評価ができません。「NRSスケールで3以下を維持する」「夜間の中途覚醒が1回以下になる」のように、数値や具体的な行動で設定しましょう。
失敗3:計画を立てたまま見直さない
患者の状態は日々変化します。入院時に立てた計画をそのまま放置せず、少なくとも週1回は計画の見直しを行いましょう。状態が大きく変わったときは、その都度修正が必要です。

Q&A|よくある疑問に答えます
Q. 新人のうちは看護計画を立てるのにどれくらい時間がかかる?
個人差はありますが、1つの看護問題につき30分〜1時間かかることは珍しくありません。経験を重ねて疾患の知識やパターンが増えてくると、徐々にスピードアップします。
Q. 看護計画の「評価」は誰がどのタイミングで行う?
原則として受け持ち看護師が行いますが、チームナーシングの場合は担当チームで共有します。評価のタイミングは短期目標の期限に合わせるのが基本です。
Q. 看護計画と看護記録(SOAP)はどう連動させる?
SOAPの「P(計画)」の部分が看護計画と連動しています。日々の記録で看護計画に基づいたケアを実施し、その結果をSOAPで記載することで、計画と記録がつながります。
Q. 看護計画の書き方に正解はある?
施設や教育機関によって書式は異なりますが、「アセスメント→看護診断→目標→計画→評価」の看護過程の流れは共通です。まずは自施設のフォーマットに沿って書き、慣れてきたら個別性を深めていきましょう。
まとめ
看護計画の立て方のコツは、標準計画をベースにして個別情報を追加すること、目標を具体的に設定すること、定期的に評価・修正することの3つに集約されます。
看護計画は患者のためのものであると同時に、チーム全体のケアの指針です。完璧を求めすぎず、まずは基本の型を身につけることから始めましょう。
レバウェル看護の看護計画ガイドやメディックメディアの看護過程解説も参考になります。
看護計画の具体的な記載例
実際の看護計画の書き方をイメージしやすいよう、具体的な記載例を紹介します。
使えそうな記載例に出会ったときは、その場で印をつけておくと後から探し直す手間がなくなります。テキストや自作のファイルにインデックス付箋を貼って「よく使う型」をまとめている人もいます。
例:術後の疼痛管理に関する看護計画
看護問題:手術に伴う急性疼痛
長期目標:退院時にNRS(数値評価スケール)で2以下の状態を維持でき、日常生活動作に支障がないレベルまで疼痛が軽減する
短期目標:術後3日目までに安静時のNRSが4以下になる。体動時の疼痛を自己管理できるようになる
観察計画(OP):
- NRSによる疼痛評価を4時間ごとに実施
- 疼痛の部位・性質・増悪因子の観察
- 鎮痛剤使用後の効果と副作用(悪心・眠気・呼吸抑制)の観察
- 創部の状態(発赤・腫脹・浸出液)の観察
ケア計画(TP):
- 医師の指示に基づき定時の鎮痛剤を投与する
- 体位変換やクッションの活用で安楽な体位を工夫する
- リラクゼーション法(深呼吸・音楽療法)の導入を支援する
- 疼痛が強い場合は医師に報告し、鎮痛方法の変更を検討する
教育計画(EP):
- NRSの使い方を説明し、痛みを我慢せず伝えるよう指導する
- 鎮痛剤の効果発現時間と持続時間を説明する
- 退院後の疼痛管理(内服方法・受診の目安)について指導する

看護計画のよくある疑問に追加で答えます
Q. NANDA-I看護診断は覚えないとダメ?
NANDA-I看護診断のすべてを暗記する必要はありません。自分の担当領域でよく使う看護診断を10〜20個把握しておけば、日常業務では十分に対応できます。診断ラベルを覚えるよりも、「この患者にはどの看護問題が当てはまるか」を判断できる力を養うことの方が重要です。
Q. 看護計画と医師の治療計画はどう違う?
医師の治療計画は疾患の治療に焦点を当てていますが、看護計画は患者の生活や日常のケアに焦点を当てている点が異なります。両者は相互に関連し合っており、チームとして統合的にケアを提供します。
Q. 複数の看護問題がある場合の優先順位はどう決める?
マズローの欲求階層理論を基に、生理的欲求(呼吸・循環・栄養など)に関わる問題を最優先にし、次に安全の欲求、社会的欲求の順で優先度をつけるのが一般的です。生命に直結する問題が最優先であることを常に意識しましょう。
看護計画は「正解が一つ」ではありません。患者の状態や治療方針、チームの方針によって内容は変わります。先輩の計画を参考にしつつも、目の前の患者に合った計画を自分の頭で考える習慣を大切にしましょう。
看護計画で使える便利なフレームワーク
ゴードンの11の機能的健康パターン
情報収集の段階で活用できるフレームワークです。患者の健康状態を11のパターンに分類してアセスメントするため、抜け漏れなく情報を整理できます。主要なパターンには「健康知覚-健康管理」「栄養-代謝」「排泄」「活動-運動」「睡眠-休息」「認知-知覚」「自己知覚-自己概念」「役割-関係」「性-生殖」「コーピング-ストレス耐性」「価値-信念」があります。
ヘンダーソンの14の基本的欲求
看護の基本となる14の項目に沿ってアセスメントするフレームワークです。「呼吸」「飲食」「排泄」「姿勢と運動」「睡眠と休息」「衣服の着脱」「体温の調節」「清潔」「危険の回避」「コミュニケーション」「信仰」「仕事」「遊びやレクリエーション」「学習」の14項目があり、患者の「できること」と「できないこと」を明確にするのに役立ちます。
どちらのフレームワークを使うかは施設の方針によりますが、型を知っておくとアセスメントの質が格段に上がります。



