看護の現場では、患者さんやご家族、医師、多職種スタッフとのやり取りが日常的に発生します。コミュニケーションの質が看護ケアの質に直結するといっても過言ではありません。
この記事では、看護師がコミュニケーションスキルを向上させるための具体的な方法を解説します。今日から実践できるテクニックも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

なぜ看護師にコミュニケーションスキルが重要なのか
看護師のコミュニケーションスキルが重要な理由は、大きく分けて3つあります。
患者さんとの信頼関係を築くため
患者さんは体調の不安や治療への恐怖を抱えていることが多いです。看護師が丁寧に耳を傾け、わかりやすく説明することで安心感を与えられるようになります。信頼関係ができると、患者さんも自分の症状や気持ちを正直に話してくれるようになり、より適切なケアにつながります。
チーム医療を円滑に進めるため
看護師は医師・薬剤師・理学療法士・栄養士など、さまざまな職種と連携して仕事をします。情報を正確かつ簡潔に伝え合うことが、チーム全体の医療の質を高めるカギです。
医療事故を防ぐため
コミュニケーション不足や伝達ミスは、医療事故の大きな原因の一つです。申し送りや指示受けの場面で正確なやり取りができれば、インシデントのリスクを大幅に下げることができます。
これだけ影響が大きい割に、コミュニケーションは現場で体系的に教わる機会が少ない分野です。看護の場面を前提に書かれた本を1冊通しておくと、感覚ではなく型として身につきます。
患者さんとのコミュニケーションで使える5つのテクニック
1. 傾聴(アクティブリスニング)
相手の話をただ聞くだけでなく、うなずきやあいづちを入れながら「あなたの話をしっかり受け止めている」という姿勢を示す聴き方です。
- 相手の目を見て話を聴く
- 「そうだったんですね」「つらかったですよね」と気持ちに寄り添う
- 話を遮らず、最後まで聴く
2. オープンクエスチョン
「はい」「いいえ」で終わらない質問のことです。「どんな感じですか?」「お食事はいかがでしたか?」と聞くことで、患者さん自身の言葉で状況を話してもらいやすくなります。
3. バックトラッキング
相手が話した内容をそのまま繰り返す技法です。「お腹が痛いんですね」と復唱することで、患者さんは自分の訴えがきちんと伝わっていると感じ、安心感が生まれます。
4. 非言語コミュニケーション
表情・視線・声のトーン・姿勢・距離感といった言葉以外の要素も非常に重要です。笑顔でゆったり話すだけで、患者さんの緊張がほぐれることは珍しくありません。
5. NURSE手法
がん看護やターミナルケアの領域で注目されている手法で、患者さんの感情に寄り添うためのフレームワークです。
- N(Naming):感情に名前をつける(「不安を感じていらっしゃるんですね」)
- U(Understanding):理解を示す(「そう思われるのは当然です」)
- R(Respecting):敬意を示す(「今までよく頑張ってこられましたね」)
- S(Supporting):支援を表明する(「一緒に考えていきましょう」)
- E(Exploring):さらに掘り下げる(「他に気になることはありますか?」)

看護師同士・多職種とのコミュニケーションのコツ
SBAR(エスバー)で報告する
医師への報告や申し送りの場面で活用できるフレームワークです。
- S(Situation):現在の状況を伝える
- B(Background):背景情報を伝える
- A(Assessment):自分のアセスメントを伝える
- R(Recommendation):提案・依頼を伝える
この順番で報告すると、短時間で漏れなく要点を伝えられるようになります。
アサーティブ・コミュニケーション
自分の意見をきちんと伝えつつ、相手の意見も尊重するコミュニケーション手法です。「私はこう思いますが、いかがでしょうか」という伝え方で、対等な対話を実現できます。先輩や医師に対して言いにくいことを伝えるときに特に有効です。
DESC法で建設的に伝える
- D(Describe):事実を客観的に述べる
- E(Express):自分の気持ちを伝える
- S(Specify):具体的な提案をする
- C(Consequences):結果を示す
この順番で話すと、感情的にならず建設的な会話ができます。
コミュニケーションスキルを磨くための日常的な練習方法
日々の振り返りノートをつける
その日のコミュニケーションで「うまくいったこと」「改善したいこと」を短くメモする習慣をつけると、自分の傾向が見えてきます。
続けるコツは、書く場所を1冊に固定してしまうことです。日付と2〜3行だけ埋める使い方なら、方眼タイプのノートが扱いやすいという声もあります。
ロールプレイで練習する
同僚と「患者さん役」「看護師役」を交代しながらロールプレイをすることで、実践的なスキルを安全な環境で鍛えられます。
研修やセミナーに参加する
日本看護協会が開催するコミュニケーション関連の研修や、オンラインで受講できるセミナーも活用してみてください。体系的に学ぶことで、スキルの土台が固まります。
読書でインプットする
コミュニケーションに関する書籍は多数出版されています。看護に特化したものだけでなく、ビジネス書やカウンセリング関連の書籍からもヒントを得られます。

コミュニケーションで困りやすい場面と対処法
怒っている患者さんへの対応
まずは相手の話を最後まで聴き、気持ちを受け止めることが最優先です。「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」とまず謝意を示し、原因を確認したうえで対応策を提示します。
認知症の患者さんとのやり取り
短い文で、ゆっくり、一つずつ伝えることが基本です。非言語コミュニケーション(笑顔・アイコンタクト・やさしい声のトーン)を特に意識してください。
ご家族への説明
医療用語を避け、わかりやすい言葉で説明することが大切です。「何か気になることがあればいつでも聞いてくださいね」と声をかけることで、安心感を与えられます。
コミュニケーションに正解は一つではありません。患者さんの性格や状態、場面によって最適なアプローチは変わります。「うまくいかないことがあっても当たり前」という前提で、少しずつスキルを積み上げていきましょう。
Q&A:看護師のコミュニケーションに関するよくある質問
Q. 人見知りでもコミュニケーションスキルは伸ばせますか?
伸ばせます。コミュニケーションは性格ではなくスキルです。傾聴やSBARなどのフレームワークを身につけることで、人見知りの人でも十分に実践できるようになります。
Q. 先輩看護師にうまく質問できません。どうすればいいですか?
「お忙しいところすみません。〇〇について確認させてください」と前置きを入れると声をかけやすくなります。聞きたい内容をあらかじめメモにまとめておくのも有効です。
この「あらかじめ書いておく」を習慣にするには、勤務中に持ち歩けるサイズであることが条件になります。白衣のポケットに収まる薄手のメモ帳なら、手が空いた瞬間に書き足せます。
Q. 電話対応に苦手意識があります。克服するコツはありますか?
電話対応用のテンプレートを手元に用意しておくと安心です。「お疲れさまです、〇〇病棟の△△です」という出だしと、要件を伝える順番をあらかじめ決めておくと緊張が和らぎます。
Q. 患者さんが話してくれないときはどうする?
無理に話を引き出そうとせず、沈黙を受け入れることも大切なコミュニケーションです。そばにいるだけで安心感を与えられることもあります。「何かあったらいつでも声をかけてくださいね」と一言添えて、患者さんのペースに合わせましょう。タッチングや笑顔など、非言語コミュニケーションを意識するのも有効です。
Q. 外国人の患者さんとのコミュニケーションが不安です。
医療通訳アプリや翻訳ツールを活用するのが現実的な対応策です。病院によっては医療通訳サービスと提携しているところもあります。指差しシートや多言語の問診票を準備しておくと、基本的な情報収集がスムーズに進みます。ジェスチャーや表情でも気持ちは伝わるので、まずは笑顔で安心感を与えましょう。

まとめ
看護師にとってコミュニケーションスキルは、患者さんのケアの質を高め、チーム医療を円滑にし、医療事故を防ぐために不可欠な能力です。
傾聴・NURSE手法・SBAR・アサーティブコミュニケーションなど、体系的なフレームワークを身につけることで、誰でも着実にスキルアップできます。
まずは一つの手法を選んで、明日の業務から試してみてください。小さな積み重ねが、看護師としての大きな成長につながります。
参考:公益社団法人 日本看護協会|コメディカルドットコム 看護師のコミュニケーション|マイナビ看護師 コミュニケーション能力



