「留置針を入れるのが苦手」「ルート確保で何度もやり直してしまう」——点滴のルート確保は看護師にとって避けて通れないスキルですが、苦手意識を持っている方は少なくありません。
しかし、ルート確保の成功率は穿刺前の準備で8割決まると言われています。血管選びやポジショニングを丁寧に行えば、成功率は格段に上がります。
この記事では、末梢静脈留置針(サーフロー)を使ったルート確保のコツを、準備から穿刺、固定まで詳しく解説します。

ルート確保が上手い看護師が意識していること

血管の見極めに時間をかける
ルート確保が上手い看護師は、穿刺する血管の選定に最も多くの時間を使っているのが特徴です。太くてまっすぐで、弾力のある血管を探し出すことが成功への第一歩になります。
ポジショニングを工夫している
自分と患者さんの位置関係も重要です。患者さんの腕をまっすぐ伸ばし、自分が正面に立てるよう体勢を整えることで、穿刺角度が安定します。
焦らず丁寧に進める
特に忙しい場面では「早く終わらせなきゃ」と焦りがちですが、準備を省略すると失敗の原因になります。一手一手を確実に進めることが結果的に時間短縮につながります。
ルート確保の成功率を上げる6つのコツ
コツ1:血管をしっかり怒張させる
駆血帯を巻いた後、腕を心臓より下に下げたり、軽く手を握ってもらったりして血管を怒張させましょう。それでも血管が出にくい場合は、蒸しタオルで温めるのが効果的です。
タオルを温める設備がすぐに使えない場面では、貼らないタイプの使い捨てカイロを腕に当てて待つ方法をとることもあります。
コツ2:触診で血管の深さと走行を確認する
目で見える血管が良い血管とは限りません。以下のポイントを指先で確認しましょう。
- 弾力:押して跳ね返る感覚がある血管を選ぶ
- 走行:まっすぐな部分を選ぶ(分岐部や蛇行部は避ける)
- 深さ:浅すぎず深すぎない位置が理想
- 太さ:留置針のゲージに見合った太さがあるか
コツ3:穿刺角度は10〜20度が基本
留置針の穿刺角度は10〜20度が目安です。血管が浅い場合はやや浅い角度で、深い場合はやや立てて穿刺します。角度が大きすぎると血管を突き抜けてしまうため注意が必要です。
コツ4:逆血を確認してから外筒を進める
穿刺後に逆血(フラッシュバック)が確認できたら、内針を少し進めてからゆっくり外筒だけを血管に沿って送り込みます。このとき内針を動かさず外筒だけを進めるのがポイントです。
コツ5:適切なゲージを選択する
留置針のゲージ選びも大切です。一般的な目安は以下の通りです。
- 18G:手術前や輸血時など、大量の輸液が必要な場合
- 20G:一般的な点滴で最もよく使用されるサイズ
- 22G:血管が細い方や高齢者に適している
- 24G:小児や非常に細い血管に使用
コツ6:刺入部位の選択肢を知っておく
前腕の橈側皮静脈や尺側皮静脈が第一選択ですが、手背静脈や肘窩の血管も選択肢に入ります。関節部位は屈曲によるトラブルが起きやすいため、なるべく避けるのが望ましいです。

ルート確保が難しい患者さんへの対応
血管が細い・見えにくい場合
高齢者やるいそう(痩せている)の方は血管が細くて見つけにくいことがあります。温めて血管を拡張させる、腕を下垂させて血液を溜める、静脈ライト(ヴェインビューワー)を活用するなどの工夫を試してみてください。
静脈ライトは施設に備品がないことも多い機器です。個人で使える小型タイプも流通しているので、どんなものがあるか見ておくと導入を提案するときの材料になります。
血管がもろい(脆弱な)場合
ステロイドを長期服用している方や超高齢者は血管が脆く、穿刺時に血管外漏出を起こしやすくなります。できるだけ太くてしっかりした血管を選び、テープ固定も丁寧に行いましょう。
肥満の患者さんの場合
皮下脂肪が厚い方は血管が深い位置にあり、目視で確認しにくいことがあります。触診を重視して血管の走行を指の感覚で把握することが重要です。
以下の部位でのルート確保は避けましょう。
- シャント側の腕(透析患者さん)
- 麻痺側の腕
- 乳房切除後のリンパ節郭清側
- 感染徴候がある部位
- 関節の屈曲部(やむを得ない場合はシーネで固定)
ルート確保後の管理と観察ポイント

刺入部の観察
留置針を入れた後も、定期的に刺入部の観察が必要です。発赤・腫脹・疼痛・浸出液がないか確認し、異常があれば速やかに抜去して差し替えましょう。
固定方法のポイント
透明フィルムドレッシング材で刺入部を覆い、チューブがひっかからないようにループを作って固定します。テープの貼り方が甘いと、患者さんの体動で針がずれたり抜けたりする原因になります。
刺入部が見える透明タイプのドレッシング材なら、貼ったまま発赤や腫脹を確認できます。サイズ違いを何種類か把握しておくと部位に合わせて選べます。
点滴の滴下速度の確認
ルート確保後は、指示された滴下速度で正しく投与されているか確認します。体位変換後や患者さんが動いた後は、滴下速度が変わっていないか再確認することが大切です。
留置針の交換タイミング
一般的に末梢留置針は72〜96時間を目安に交換するとされていますが、施設によって方針が異なります。刺入部にトラブルの徴候があれば時間にかかわらず早期に差し替えるのが原則です。

ルート確保のスキルを上達させる練習方法

シミュレーターで繰り返し練習する
採血シミュレーターと同様に、ルート確保用のトレーニング模型がある施設も多くあります。逆血の確認から外筒の送り込みまでの一連の流れを、体が覚えるまで反復しましょう。
職場に模型がない、または順番待ちで使えないという場合は、個人で購入できる静脈注射用の練習モデルもあります。
先輩のテクニックを観察する
上手い先輩がどのような手順で進めているか、血管選びにどれくらい時間をかけているかを観察するのも有効です。「こうすると成功しやすい」という自分なりの法則を見つけましょう。
失敗を記録して分析する
失敗したときに「なぜ失敗したか」を振り返ることが上達への近道です。血管の選び方が悪かったのか、角度が大きすぎたのか、外筒の送り込みがうまくいかなかったのかを分析しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q. 逆血があったのに外筒が進まない場合はどうすればいいですか?
外筒が血管壁に引っかかっている可能性があります。無理に押し込むと血管を破る原因になるため、いったん内針ごと少し引き、角度を調整してから再度進めてみましょう。それでも進まない場合はやり直した方がよいです。
Q. ルート確保と採血の違いで気をつけるポイントは?
留置針は血管内に外筒を留置するため、血管がまっすぐ走っている部分を選ぶことが特に重要です。採血と異なり、長時間留置するため関節部位は避け、患者さんの生活動作に影響しにくい部位を選びましょう。
Q. 何回失敗したら交代するべきですか?
施設のルールに従うのが基本ですが、一般的には2回失敗したら他のスタッフに交代するのが望ましいとされています。患者さんの苦痛を最小限にすることが最優先です。
Q. 血管外漏出が起きたときの対応は?
刺入部の腫脹や疼痛に気づいたら、すぐに点滴を止めて留置針を抜去します。漏出した薬剤の種類を確認し、皮膚障害のリスクがある薬剤(抗がん剤や高浸透圧の薬剤など)の場合は速やかに医師へ報告しましょう。軽度であれば患部を挙上し、冷却または温罨法で対応します。
Q. 小児のルート確保で気をつけることは?
小児は血管が細く、じっとしていることが難しいため、安全な体位の確保が特に重要です。保護者の協力を得ながら、できるだけ短時間で終わらせるようにしましょう。24Gの留置針を使用し、固定はシーネや包帯で補強して自己抜去を防ぎます。
Q. 静脈ライト(ヴェインビューワー)はどのくらい効果がありますか?
近赤外線で血管を可視化する静脈ライトは、血管が見えにくい患者さんに対して特に有効です。ただし、静脈ライトで見えた血管でも触診で弾力や深さを確認する作業は省略できません。あくまで補助ツールとして活用し、最終判断は触診で行いましょう。

まとめ
ルート確保の上達には、穿刺テクニックだけでなく、血管選び・ポジショニング・ゲージ選択・固定管理まで含めた総合的なスキルが求められます。
- 成功率の8割は穿刺前の準備で決まる
- 触診で血管の弾力・走行・深さを確認する
- 穿刺角度は10〜20度を意識する
- 逆血確認後に外筒をゆっくり進める
- 留置後の刺入部観察と管理も重要
日々の業務で一回一回のルート確保を意識的に行い、振り返りを重ねることが着実な上達につながります。焦らず丁寧に取り組んでいきましょう。



