「いつかイギリスで看護師として働いてみたい」と考えたことはありませんか。NHS(国民保健サービス)が整備されたイギリスは、世界中から医療人材を受け入れている国のひとつです。日本の看護師資格を活かして海外で活躍する道は、実はしっかりと整っています。
ただし、イギリスで看護師として働くためにはNMC(Nursing and Midwifery Council)への登録や英語試験のクリア、就労ビザの取得など複数のステップを踏む必要があります。この記事では、日本人看護師がイギリスで働くための流れを一つひとつ丁寧に解説していきます。

イギリスで看護師として働くための全体像
日本の看護師免許を持つ方がイギリスで正規の看護師(Registered Nurse)として働くまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 英語試験(IELTSまたはOET)をクリアする
- NMCへの登録申請と必要書類の準備
- CBT(Computer Based Test)を受験・合格する
- OSCE(実技試験)を受験・合格する
- NMC登録完了後、雇用先を確保する
- Skilled Worker visaを取得して渡英
すべてのステップを完了するまでには、一般的に半年から1年程度かかるとされています。英語力や書類の準備状況によって個人差がありますが、計画的に進めることが大切です。
NMC登録に必要な英語資格と基準スコア
NMCへの登録にあたっては、英語力の証明が最初のハードルになります。認められている英語試験と必要スコアは以下のとおりです。
IELTSの場合
IELTSアカデミック版で、オーバーオールスコア7.0以上が求められます。各セクションの最低スコアはリーディング7.0、リスニング7.0、スピーキング7.0、ライティング6.5です。6ヶ月以内に受験した2回分のテスト結果を組み合わせることも可能ですが、各セクション最低6.5を下回ってはいけません。独学で進める場合は、公式問題集とセクション別の対策本を組み合わせて使う方が多いです。
OETの場合
OET(Occupational English Test)はリーディング・リスニング・スピーキング・ライティングの全4技能でB以上のスコアが必要です。OETは医療分野に特化した英語試験のため、看護師にとっては実務に近い内容を学びながら対策できるメリットがあります。
英語スコアには有効期限があるため、NMC申請時に期限切れにならないよう逆算してスケジュールを立てましょう。IELTSの結果は通常2年間有効です。
NMCへの登録申請と必要書類
英語資格をクリアしたら、NMC(看護助産師協議会)のオンラインポータルから登録申請を行います。日本人看護師が準備する主な書類は次のとおりです。
- 看護師免許証(原本と英語翻訳版)
- 看護教育の修了証明書(卒業証明書と成績証明書の英語翻訳版)
- 英語試験の成績証明書(IELTSまたはOET)
- パスポートのコピー
- 犯罪経歴証明書(警察証明)
- 勤務先からのレファレンスレター
翻訳書類は公認翻訳者(certified translator)による翻訳であることが求められる場合が多いため、専門の翻訳サービスを利用するのが確実です。
CBTとOSCE:2つの試験をクリアしよう
CBT(Computer Based Test)
CBTはNMCが求める看護知識を確認するための試験で、パソコン上で回答します。出題範囲はイギリスの看護基準に基づいており、日本の看護知識だけでは不十分な部分もあるため、イギリスの医療制度やNHSの仕組みについて事前に学習しておく必要があります。
日本国内ではピアソンVUEのテストセンターで受験可能です。受験料は約£83(記事執筆時点)で、対策には公式の学習ガイドやオンライン教材を活用するのがおすすめです。
OSCE(Objective Structured Clinical Examination)
OSCEは実技試験で、イギリス現地の指定テストセンターで受験します。バイタルサイン測定や投薬管理、患者とのコミュニケーションなどの看護スキルが評価対象です。
英語で患者対応を行うシミュレーションが含まれるため、日常会話レベルではなく医療現場で使える実践的な英語力が問われます。OSCEの受験料は約£794(記事執筆時点)です。

就労ビザ(Skilled Worker visa)の取得方法
NMC登録が完了し、イギリスの医療機関から内定をもらったら、Skilled Worker visa(技能労働者ビザ)の申請に進みます。看護師はイギリスの「不足職種リスト」に含まれているため、ビザ取得は比較的スムーズに進むケースが多いです。
- 雇用主がスポンサーライセンスを保有していること
- 最低年収の要件を満たすこと(一般のSkilled Worker visaは年間£41,700以上が基本ラインだが、看護師はHealth and Care Worker routeで大幅に緩和される)
- 英語力の証明(NMC登録時のIELTS/OETスコアが流用可能)
- ビザ申請料や医療保険料(IHS)の支払い
ビザの有効期間は最長5年で、更新も可能です。5年間の滞在後には永住権(ILR)の申請も検討できます。NHS所属の医療機関であればスポンサーライセンスを持っていることが多いため、まずはNHS関連の求人を探すのが効率的です。
イギリスで看護師として働く際の給与と待遇
NHSで働く場合、看護師の給与はBand(等級)によって決まります。新卒レベルのBand 5からスタートし、経験やスキルに応じてBand 6以上に昇格していく仕組みです。
NHSの公開情報によると、Band 5の年収は約£31,049〜£37,796(2025/26年度)です。為替レートによって日本円換算は変動しますが、イギリスの物価を考慮すると決して高い水準ではないものの、夜勤手当や休日手当が加算されるケースもあります。
また、NHSの福利厚生はかなり充実しており、年金制度や有給休暇(年間最低27日)、育児休暇制度なども整備されています。日本と比べると残業も少なく、ワークライフバランスが保ちやすい環境だと言えます。
日本人看護師がイギリスで働くメリットと注意点
メリット
- NHSでの勤務経験は国際的に高く評価される
- 看護師は不足職種のためビザが取りやすい
- ワークライフバランスが取りやすい労働環境
- 多国籍なチームで働けるため国際的な視野が広がる
- 永住権取得への道も開かれている
注意点
- IELTSオーバーオール7.0は日本人にとってかなりハードルが高い
- OSCEはイギリス現地での受験が必要
- ロンドン周辺は生活費が非常に高い
- NHSは人手不足で業務負担が大きい部署もある
- 医療文化や患者対応の考え方が日本と異なる

イギリスで働くために今から始められる準備
「いつか行きたい」と思いつつも、何から始めればいいか分からないという方は多いはずです。以下のステップで少しずつ準備を進めていきましょう。
- 英語の基礎固め:まずはTOEICやIELTS対策から始めて、英語に触れる時間を毎日確保する
- 医療英語の習得:OETの問題集やIPECの看護英語試験対策教材を活用する
- NMCの公式サイトで最新要件を確認:NMC公式サイトで登録プロセスの詳細をチェックする
- 費用を把握して資金計画を立てる:英語試験・NMC登録・OSCE渡航費・ビザ申請料など、合計で100万円前後は見込んでおく
- 情報収集と交流:イギリスで働く日本人看護師のブログやSNSをフォローして、リアルな体験談を参考にする
2つ目の医療英語は、一般的な英語学習とは語彙がまったく違う領域です。看護の場面で使う表現を集めたテキストを1冊持っておくと、日々の学習に組み込みやすくなります。
イギリスの看護師が働く現場の特徴
NHSで働く場合、日本の病院とはいくつかの違いがあります。
チーム医療と看護師の裁量
イギリスでは看護師の裁量範囲が日本よりも広く、特定の処方を行える資格を持つ看護師(Nurse Prescriber)もいます。患者のケアプラン策定においても看護師の意見が重視されるため、自分の判断で動ける場面が多い環境です。
患者中心のケア
NHSでは「患者中心のケア(Patient-Centred Care)」が強く推進されており、患者さんの意思決定を尊重したケアが基本です。日本とは異なるコミュニケーションスタイルが求められますが、看護の本質は変わりません。
よくある質問(Q&A)
Q. 看護師の専門学校卒でもNMCに登録できますか?
はい、3年以上の看護教育課程を修了していれば、大学卒でなくても申請は可能です。ただし、カリキュラムの内容が審査対象になるため、NMCの教育要件と照らし合わせて確認しておきましょう。
Q. 英語が苦手でも目指せますか?
正直なところ、IELTSオーバーオール7.0はかなり高いハードルです。しかし、1〜2年かけてじっくり勉強すれば到達できるレベルでもあります。毎日の学習習慣をつけることが大切です。
Q. 家族を連れて渡英できますか?
Skilled Worker visaの保有者は、配偶者やお子さんを帯同ビザ(Dependant visa)で呼び寄せることができます。家族連れでの渡英も実現可能です。
Q. イギリス以外の国でも看護師免許は使えますか?
NMC登録はイギリス国内での資格です。ただし、イギリスでの勤務経験は他国(オーストラリア、カナダなど)での免許取得時にプラスに働くケースもあります。
イギリスでの看護師キャリアは、英語力と準備が求められるものの、しっかりステップを踏めば実現可能な目標です。まずは英語学習を始めることから一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考情報:NMC公式サイト|NHS Employers



