急変対応は、すべての看護師にとって避けて通れない場面です。「いざというときに体が動くだろうか」「何から手をつければいいのかわからない」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、看護師が急変時に慌てずに対応するための基本手順とコツを、発見から蘇生・報告までの流れに沿って詳しく解説します。

急変対応の基本手順
急変に遭遇したとき、看護師がまず取るべき行動を4つのフェーズに分けて説明します。
フェーズ1:異変の発見(トリガー)
急変対応の第一歩は、患者の異変にいち早く気づくことです。以下のような変化を見逃さないようにしましょう。
- 意識レベルの低下・反応が鈍い
- 呼吸の異常(呼吸が速い・浅い・ない・あえぎ呼吸)
- 顔色の変化(チアノーゼ・蒼白)
- SpO2の急激な低下
- 脈拍の異常(頻脈・徐脈・不整脈)
- 血圧の急激な変動
- 「なんとなくおかしい」という直感
SpO2の変化は見た目だけでは判断しづらいところです。訪問看護など測定機器が限られる現場では、自分用のパルスオキシメーターを携帯している看護師もいます。
「なんとなくいつもと違う」という看護師の直感は、バイタルサインの数値が正常範囲内でも重要な早期発見のサインです。違和感を感じたら躊躇せず声を上げましょう。
フェーズ2:応援要請と初期評価
異変を発見したら、すぐに以下の行動を取ります。
1. 応援を呼ぶ
まず大声で周囲のスタッフに助けを求めます。ナースコールやPHSを使って「急変です!○号室に来てください!」と明確に伝えましょう。一人で対応しようとしないことが鉄則です。
2. 意識の確認
肩を軽く叩きながら「大丈夫ですか?」と呼びかけます。反応がなければ意識消失と判断します。
3. 呼吸と脈拍の確認(10秒以内)
胸の動きを目で確認し、頸動脈の脈拍を触知します。正常な呼吸がない、または死戦期呼吸(あえぎ呼吸)のみの場合は、心停止と判断してBLS(一次救命処置)に移行します。
フェーズ3:BLS(一次救命処置)の実施
心停止と判断した場合
- 胸骨圧迫を開始:胸骨の下半分に手の付け根を置き、約5cmの深さで強く速く圧迫する(100〜120回/分のテンポ)
- AEDの装着:他のスタッフがAEDを持ってきたら電源を入れ、音声ガイドに従ってパッドを貼り、解析・除細動を行う
- 人工呼吸:BVMバッグ(バッグバルブマスク)が使える場合は、胸骨圧迫30回に対して2回の人工呼吸を行う
- 医師の到着を待つ:CPR(心肺蘇生法)を中断せずに継続し、医師やACLSチームの到着を待つ
脈拍があるが呼吸異常の場合
脈拍が触知できるが正常な呼吸がない場合は、BVM換気を6秒に1回のペースで行いながら、医師の到着を待ちます。
この一連の流れは頭では分かっていても、いざという場面では飛びやすいところです。急変対応を扱った書籍で、アルゴリズムを図で確認しながら復習しておくと定着しやすくなります。

フェーズ4:医師への報告(SBAR)
医師に状況を報告する際は、SBAR(エスバー)の枠組みを使うと簡潔に伝わります。
- S(Situation:状況):「○号室の△△さんが意識消失しています」
- B(Background:背景):「心不全で入院中の方で、先ほどまで安静にされていました」
- A(Assessment:評価):「呼びかけに反応なく、脈拍微弱、SpO2測定不能です」
- R(Recommendation:提案):「すぐに来ていただけますか。CPRを開始しています」
医師への第一声で「急変です」「早めに来てください」「相談です」と緊急度を伝えると、医師側も心構えができてスムーズな連携につながります。
急変対応で看護師が意識すべきコツ
1. 「まずは応援を呼ぶ」を徹底する
急変に遭遇すると「自分がなんとかしなきゃ」と焦りがちですが、一人でできることには限界があります。まずは大きな声で応援を呼び、マンパワーを確保することが最優先です。
2. ABCDEの順番で評価する
急変時の身体評価は、以下の優先順位で行います。
- A(Airway):気道は開通しているか
- B(Breathing):呼吸はしているか
- C(Circulation):循環は保たれているか(脈拍・血圧・出血の有無)
- D(Disability):意識レベルはどうか
- E(Exposure):全身の観察(皮膚の状態・体温など)
3. 記録係を決める
急変対応中は、時間経過や実施した処置を正確に記録することが重要です。対応に入ったスタッフの中から記録係を1人決めて、時間・処置内容・投与薬剤・バイタルサインの変化を記録してもらいましょう。
胸骨圧迫の交代タイミングや投薬間隔を追うには、経過時間がひと目で分かるストップウォッチがあると記録係の負担が減ります。
4. 落ち着いた声で指示を出す・受ける
急変時こそ冷静な声のトーンが大切です。指示を出すときは「○○さん、アドレナリン1mg IVお願いします」のように、指示相手の名前+具体的な内容を明確に伝えます。指示を受けたら必ず復唱して確認しましょう。
急変に備えた日頃の準備
BLS・ACLS研修に参加する
BLS(一次救命処置)やACLS(二次心肺蘇生法)の研修は、定期的に受講することで知識と技術をアップデートできます。実技練習で体に手順を覚えさせておくことが、実際の急変時に大きな差を生みます。
シミュレーション訓練を行う
職場でのシミュレーション訓練(コードブルー訓練など)に積極的に参加しましょう。実際の病室や廊下で模擬患者を使った訓練を行うことで、本番さながらの動きを経験できます。
急変カートの場所と中身を確認する
救急カートの設置場所、中身の配置、AEDの設置場所を日頃から確認しておくことが重要です。いざという時に「カートがどこにあるかわからない」では対応が遅れてしまいます。
患者の異変に気づく力を磨く
日々のバイタルサイン測定や観察の中で「いつもと違う」変化を見逃さないことが、急変の早期発見につながります。些細な変化でもカルテに記録し、チームで共有する習慣を持ちましょう。

急変対応後の振り返り(デブリーフィング)
チームで振り返る
急変対応が終わったら、関わったスタッフ全員でデブリーフィング(振り返り)を行います。「何がうまくいったか」「改善すべき点は何か」をチームで共有することで、次の急変対応の質が向上します。
精神的なケアも忘れずに
急変対応後は精神的な疲労が大きいものです。つらいと感じたら無理せず先輩や同僚に気持ちを話すことが大切です。施設によっては、重大な急変対応後にカウンセリングの機会を設けているところもあります。
急変対応でよくある失敗と対策
失敗1:一人で対応しようとする
焦りのあまり応援を呼ばずに対処しようとするケースがあります。胸骨圧迫をしながらAEDを取りに行くことはできません。まず応援を呼ぶことを最優先にしましょう。
失敗2:胸骨圧迫の中断時間が長い
AEDの準備や薬剤の投与で胸骨圧迫を中断する時間が長くなると、蘇生率が下がります。中断は10秒以内に抑えることが推奨されています。2分ごとに圧迫者を交代し、質の高い胸骨圧迫を維持しましょう。
失敗3:報告が曖昧になる
「大変です!すぐ来てください!」では、医師は状況を把握できません。SBARの型を使い、「何が起きていて、何をしてほしいか」を簡潔に伝えることが重要です。
失敗4:記録が残っていない
急変対応後に「何時に何をしたか思い出せない」という事態は避けたいところです。対応開始時に記録係を1人決めておくことで、正確な時系列記録が残せます。
急変対応に役立つ知識の整理法
ポケットカードの作成
急変対応の手順やBLSのアルゴリズムを名刺サイズのカードにまとめて白衣のポケットに入れておく方法が効果的です。パニック時でもカードを見れば次のアクションが確認できます。
自作が面倒なら、基準値やアルゴリズムがまとまった市販のポケットブックを白衣に入れておくだけでも代わりになります。
定期的なBLS研修への参加
JRC(日本蘇生協議会)のガイドラインは5年ごとに改定されます。最新のエビデンスに基づいた知識を維持するために、年に1回はBLS研修を受講することが推奨されます。
動画で手技を確認する
胸骨圧迫の正しい手技やAEDの使い方は、文章だけでは理解しにくい部分もあります。看護roo!やYouTubeの公式医療チャンネルなどで動画を見て、実際の動きをイメージしておくと本番で役立ちます。
Q&Aコーナー
Q. 急変に遭遇したとき、頭が真っ白になってしまいます。どうすればいいですか?
頭が真っ白になるのは自然な反応です。そのときにまず思い出すのは「応援を呼ぶ」の一点だけで大丈夫です。応援が来れば、先輩の指示に従って動くことができます。普段からシミュレーション訓練に参加して「体で覚える」ことが、パニック時の行動力につながります。
Q. 新人看護師でも急変対応はできますか?
新人でも「異変に気づいて応援を呼ぶ」「胸骨圧迫をする」ことは十分にできます。急変対応はチームで行うものなので、自分の役割をひとつ果たすだけでも大きな貢献です。経験を積むごとに対応できる範囲が広がっていきます。
Q. AEDの使い方がわかりません。急変時に使えるか不安です。
AEDは電源を入れれば音声ガイドが流れるので、初めてでも操作できるよう設計されています。ただし、日頃からトレーニング用AEDで練習しておくと、実際の場面でスムーズに動けます。BLS研修で実技練習ができるので、積極的に参加しましょう。
院内研修の機会が少ない施設では、訓練用のAEDトレーナーを備えて勉強会に使っているところもあります。
まとめ
急変対応の基本は「異変に気づく→応援を呼ぶ→初期評価→BLS→医師に報告」の流れです。ABCDEの優先順位を意識し、SBARで簡潔に報告することがスムーズな対応のカギになります。
日頃からBLS研修やシミュレーション訓練に参加し、体で手順を覚えておくことが、いざという時の自信につながります。急変対応はチームで行うもの。一人で抱え込まず、仲間と力を合わせて患者の命を守りましょう。

参考:急変対応.net「急変対応マニュアル保存版ガイド」/看護roo!「急変対応って結局どうすればいいの?」/レバウェル看護「一次救命処置(BLS)の手順と看護師の役割」



