「看護師を辞めると決めたけど、何から始めればいいかわからない」と悩んでいませんか。退職の手順を間違えると、トラブルに発展したり、引き継ぎが不十分で迷惑をかけたりすることがあります。
看護師の退職は一般企業と比べて手続きが複雑になることが多いです。シフト制の引き継ぎ、患者さんへの申し送り、奨学金の返済確認など、看護師ならではの注意点があります。
この記事では、看護師が円満に退職するための具体的な手順を、時系列に沿ってわかりやすく解説します。退職を決めた方も、まだ検討中の方も、ぜひ一度目を通しておいてください。

看護師の退職手順|全体の流れ
退職の流れを時系列で把握しておきましょう。一般的に退職の意思表示から実際の退職日まで、2〜3ヶ月が目安です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職3ヶ月前 | 退職の意思を固める・転職活動開始 |
| 退職2ヶ月前 | 直属の上司(師長)に退職の意思を伝える |
| 退職1.5ヶ月前 | 退職届の提出・退職日の確定 |
| 退職1ヶ月前 | 業務の引き継ぎ開始 |
| 退職2週間前 | 有給休暇の消化開始 |
| 退職当日 | 挨拶回り・備品返却・退職書類の受け取り |
ステップ1:退職の意思を固める(3ヶ月前)
まずは「本当に辞めるのか」を自分の中で確定させましょう。迷いがある状態で上司に伝えると、引き止められて撤回してしまうケースが非常に多いです。
退職理由を整理する
退職理由を紙に書き出して整理しましょう。上司に聞かれたときにブレずに答えられるように準備しておくことが大切です。なお、本音の退職理由をそのまま伝える必要はありません。
「人間関係が嫌だ」「給料が低い」という本音があっても、上司に伝える際は「キャリアアップのため」「家庭の事情で」など、前向きな理由や当たり障りのない理由にするのが円満退職のコツです。
転職活動を開始する
在職中に転職活動を始めるのがベストです。次の仕事が決まっている状態で退職を申し出れば、引き止めにも「もう次が決まっています」と明確に対応できます。
看護師専門の転職サイトに登録すれば、担当アドバイザーが求人探しから面接日程の調整まで代行してくれます。忙しい現職看護師でも効率的に転職活動を進められます。

ステップ2:上司に退職の意思を伝える(2ヶ月前)
退職の意思が固まったら、直属の上司である看護師長に伝えます。ここが最も緊張するポイントですが、しっかり準備しておけば大丈夫です。
伝えるタイミング
忙しい業務中ではなく、師長が落ち着いているタイミングを選びましょう。「少しお時間いただけますか」と事前にアポイントを取るのが理想的です。
避けたいのは以下のタイミングです。
- 朝の申し送り直後(バタバタしている)
- 人手が足りない日(感情的になりやすい)
- 月末・年度末の繁忙期
- 他のスタッフがいる場所(個室で話す)
伝え方のポイント
「退職を考えています」ではなく「退職を決意しました」と明確に伝えるのが重要です。「考えている」と言うと「もう少し考え直してみて」と引き止められる原因になります。
伝える際のポイントは以下の通りです。
- 「○月末をもって退職させていただきたいと思います」と具体的な時期を伝える
- 退職理由は前向きな内容にする(キャリアアップ、家庭の事情など)
- 感謝の気持ちを伝える(「大変お世話になりました」)
- 引き継ぎには責任を持つ姿勢を見せる
引き止められた場合の対応
看護師は慢性的な人手不足のため、引き止めは避けられません。よくある引き止めパターンと対応方法を知っておきましょう。
| 引き止めパターン | 対応方法 |
|---|---|
| 「もう少し頑張ってみない?」 | 「十分考えた結果です。意思は変わりません」 |
| 「後任が見つかるまで待って」 | 「○月までは責任を持って引き継ぎします」 |
| 「異動で解決しない?」 | 「ありがたいお話ですが、退職の意思は変わりません」 |
| 「給料を上げるから」 | 「金銭面の問題ではありません」 |
ステップ3:退職届を提出する(1.5ヶ月前)
口頭で退職の意思を伝えた後、正式に退職届を提出します。退職届と退職願の違いを理解しておきましょう。
退職届と退職願の違い
退職願は「辞めさせてください」というお願い、退職届は「辞めます」という通告です。退職の意思が確定しているなら「退職届」を提出しましょう。
ただし、病院によっては所定の退職届フォーマットが用意されている場合があります。事前に人事部に確認してください。
退職届の書き方
退職届は手書きが一般的です。白い便箋にボールペン(黒)で以下の内容を記入します。
- 表題:「退職届」
- 本文:「このたび一身上の都合により、令和○年○月○日をもちまして退職いたしたく、ここにお届けいたします。」
- 日付:退職届の提出日
- 所属・氏名:自分の部署名と氏名(捺印)
- 宛名:病院の最高責任者の氏名(理事長・院長など)

ステップ4:業務の引き継ぎ(1ヶ月前〜)
退職が正式に決まったら、業務の引き継ぎを開始します。円満退職のカギは、この引き継ぎの質にかかっています。
引き継ぎで準備するもの
- 担当患者さんの情報(ケアプラン、注意事項、家族との関係性)
- 日常業務の手順書(自分にしかわからない業務がないようにする)
- 委員会活動やプロジェクトの進捗状況
- ロッカーの鍵、IDカード、ユニフォームなどの返却物リスト
引き継ぎのコツ
日本看護協会が推奨するように、引き継ぎは口頭だけでなく文書に残すのが鉄則です。後任の方が困ったときに確認できる資料を作っておきましょう。
特に看護師の引き継ぎで重要なのが「患者さんの個別対応事項」です。ご家族との関係性や、患者さんの好み、ケアの注意点など、カルテに書かれていない情報を丁寧に伝えることが大切です。
ステップ5:有給休暇を消化する(2週間前〜)
有給休暇は労働者の権利です。残っている有給休暇は退職前にしっかり消化しましょう。
有給消化を拒否された場合
「人手が足りないから有給は取らないで」と言われるケースがありますが、有給休暇の取得は労働基準法で認められた権利であり、会社側が拒否することはできません。
厚生労働省の労働基準関連ページでも明記されている通り、有給休暇は法的に保護された権利です。どうしても拒否される場合は、労働基準監督署に相談しましょう。
ステップ6:退職当日にやること
退職当日は以下の手続きを忘れずに行いましょう。
返却するもの
- IDカード・入館証
- ユニフォーム(クリーニング済み)
- ロッカーの鍵
- 院内PHS
- 健康保険証
- その他病院から貸与されたもの
受け取るもの
- 離職票(失業保険の申請に必要)
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳(病院が保管している場合)
- 退職証明書(必要に応じて)
離職票は退職後2週間以内に届くのが一般的です。届かない場合は人事部に問い合わせましょう。失業保険の申請には離職票が必須です。
挨拶回り
お世話になった方々への挨拶は社会人としてのマナーです。菓子折りを持参するのが一般的です。全員に直接挨拶するのが難しい場合は、ナースステーションにお菓子を置いて、メッセージカードを添えるのも一つの方法です。

退職後にやるべき手続き
退職後は以下の手続きが必要です。次の職場がすぐに決まっている場合は一部省略できます。
| 手続き | 期限 | 場所 |
|---|---|---|
| 健康保険の切り替え | 退職後14日以内 | 市区町村役場 or 任意継続は協会けんぽ |
| 国民年金への加入 | 退職後14日以内 | 市区町村役場 |
| 失業保険の申請 | 退職後すぐ | ハローワーク |
| 住民税の支払い方法変更 | 退職月による | 市区町村役場 |
| 確定申告 | 翌年2〜3月 | 税務署 or e-Tax |
特に健康保険の切り替えは忘れがちですが、退職後14日以内に手続きしないと無保険状態になってしまいます。次の職場に入職するまでの期間が空く場合は、国民健康保険への加入か、前の職場の健康保険を任意継続するかを選択しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 退職は何ヶ月前に伝えればいいですか?
A. 就業規則で「2ヶ月前まで」と定められている病院が多いです。法律上は2週間前で退職可能ですが、円満退職のためには2〜3ヶ月前に伝えるのが理想的です。
Q. 退職理由は正直に言うべきですか?
A. 必ずしも正直に言う必要はありません。「一身上の都合」で法的には問題ありません。円満退職のためには「キャリアアップのため」「家庭の事情で」など、前向きで当たり障りのない理由がおすすめです。
Q. 退職届を受け取ってもらえない場合はどうすれば?
A. 内容証明郵便で病院宛に退職届を送付する方法があります。内容証明は「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を証明できるため、法的な証拠になります。
Q. 奨学金の返済義務はどうなりますか?
A. 病院からの奨学金は、一定期間(通常3〜5年)の勤務を条件に返済免除となるケースが多いです。途中退職の場合は残額の一括返済を求められることがあります。退職前に必ず奨学金の契約書を確認してください。
Q. 退職後すぐに転職しない場合、失業保険はもらえますか?
A. 自己都合退職の場合、失業保険は申請後約2ヶ月の給付制限期間を経て受給開始になります。雇用保険に12ヶ月以上加入していることが条件です。ハローワークで手続きしましょう。
まとめ:退職は段取りが全て。計画的に進めよう
- 退職の意思表示は2〜3ヶ月前が理想。就業規則を事前に確認する
- 師長には「考えている」ではなく「決意しました」と明確に伝える
- 退職届は「一身上の都合」でOK。詳しい理由は不要
- 引き継ぎは口頭+文書で丁寧に。円満退職のカギ
- 有給休暇は法的に認められた権利。遠慮なく消化する
- 退職後の健康保険・年金の手続きを忘れずに
退職は人生の大きな決断ですが、正しい手順を踏めば円満に辞めることができます。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、最後まで責任を持って退職手続きを進めましょう。


