「毎日のように無視される」「わざと情報共有から外される」「ミスを大勢の前で叱責される」――看護師の職場で起きるいじめは、想像以上に深刻な問題です。
厚生労働省の調査によると、医療・福祉業界はパワーハラスメントの相談件数が全業種の中でもトップクラスに位置しています。命を預かる緊張感の高い職場だからこそ、人間関係のトラブルが発生しやすいのです。
この記事では、看護師のいじめに悩む方に向けて、今すぐ実践できる具体的な対処法と、状況を改善するためのステップを詳しく解説します。一人で抱え込まず、まずはできることから始めてみましょう。

看護師の職場でいじめが起きやすい理由
いじめの対処法を考える前に、まずはなぜ看護師の職場でいじめが起きやすいのかを理解しておきましょう。原因を知ることで、より効果的な対策が見えてきます。
閉鎖的な人間関係と縦社会
看護師の職場は、同じメンバーで長期間にわたって働くことが多く、閉鎖的な人間関係が形成されやすい環境です。病棟やユニットごとに独自のルールや暗黙の了解が存在し、新しく入ったスタッフがなじめないケースも少なくありません。
また、先輩・後輩の上下関係が強く、経験年数による縦社会の文化が根強い職場もあります。こうした環境では、立場の弱い人がターゲットになりやすくなります。
慢性的な人手不足によるストレス
日本看護協会の報告によると、多くの医療機関で看護師の人手不足が続いています。人員が足りない中で業務をこなさなければならないストレスは、職場の雰囲気を悪化させる大きな要因です。
余裕のない状態が続くと、些細なミスに対して過剰に反応したり、特定の人に八つ当たりしたりする行動が生まれやすくなります。
命を預かるプレッシャーと完璧主義
医療現場では小さなミスが患者さんの命に関わるため、ミスに対する許容度が極めて低い傾向にあります。「ミスは絶対に許されない」という完璧主義的な風土が、厳しい指導という名目でいじめに発展することもあるのです。
いじめが起きる背景には、個人の性格だけでなく職場環境の構造的な問題が深く関わっています。自分を責める必要はありません。
看護師のいじめでよくあるパターン
いじめにはさまざまな形があります。自分が受けている行為がいじめに該当するのか判断するためにも、よくあるパターンを確認しておきましょう。
無視・仲間外れ
挨拶を返さない、申し送りの際に情報を共有しない、休憩室で話しかけても反応しないなど、意図的にコミュニケーションから排除する行為は、最も多いいじめのパターンの一つです。
過度な叱責・人格否定
ミスをした際に大勢の前で怒鳴る、「あなたには看護師は向いていない」と人格を否定する発言をする、過去のミスを何度も蒸し返すなどの行為が該当します。指導の範囲を超えた叱責は、明確なハラスメントです。
業務上の嫌がらせ
一人では対応しきれない量の仕事を押し付ける、逆に簡単な業務しかやらせない、シフトを不当に変更するなど、業務を通じた嫌がらせも深刻ないじめです。
陰口・噂話の流布
本人のいないところで悪口を言う、プライベートな情報を広める、事実と異なる噂を流すといった行為も、職場いじめの典型的なパターンです。

今すぐ実践できるいじめへの対処法7選
いじめに対して具体的にどう行動すればよいのか、すぐに取り組める対処法を7つご紹介します。
1. 記録をつける
いじめの事実を客観的に証明するために、記録をつけることは非常に重要です。以下の項目を日付順に記録しておきましょう。
- いつ(日時)
- どこで(場所)
- 誰に(加害者)
- 何をされたか(具体的な言動)
- 目撃者はいたか
- 自分がどう感じたか
スマートフォンのメモアプリやノートに記録するのが手軽です。可能であれば、メールやLINEのやり取りなどデジタルな証拠も保存しておきましょう。
2. 信頼できる人に相談する
一人で抱え込まず、信頼できる同僚や先輩、友人、家族に相談しましょう。話を聞いてもらうだけでも精神的な負担は軽くなります。また、第三者の視点からアドバイスをもらえることもあります。
3. 上司や看護部長に報告する
直属の上司(師長)に相談するのが基本ですが、上司自身がいじめの加害者である場合は、さらに上の看護部長や副院長に報告しましょう。報告の際は、先ほどの記録が大いに役立ちます。
4. 病院のハラスメント相談窓口を利用する
多くの医療機関では、ハラスメント相談窓口が設置されています。匿名での相談を受け付けている場合もありますので、まずは窓口の存在を確認してみてください。
5. 外部の相談機関を活用する
院内での解決が難しい場合は、外部の相談機関を利用しましょう。以下のような窓口が無料で利用できます。
- 厚生労働省 総合労働相談コーナー:職場のトラブル全般について相談可能
- 日本看護協会:看護職の労働相談を受け付け
6. メンタルヘルスのケアを優先する
いじめによるストレスが心身に影響を及ぼしている場合は、心療内科やカウンセリングを受けることをためらわないでください。眠れない、食欲がない、涙が止まらないなどの症状がある場合は、早めの受診が大切です。
7. 異動・転職を視野に入れる
さまざまな対処をしても状況が改善しない場合は、異動や転職も立派な選択肢です。「逃げ」ではなく、自分の心と体を守るための前向きな決断と捉えましょう。

いじめが改善しないときの最終手段
上記の対処法を試しても改善が見られない場合は、より強い対応が必要です。
労働基準監督署への相談
職場のいじめやハラスメントが法律に抵触する可能性がある場合は、労働基準監督署に相談することができます。記録や証拠があれば、より具体的な対応をしてもらえます。
弁護士への相談
パワーハラスメントによって精神的・身体的な被害を受けた場合は、弁護士に相談して法的措置を検討することも選択肢の一つです。初回相談無料の法律事務所も増えています。
退職・転職という選択
心身の健康が最も大切です。いじめのある環境に留まり続けることで、うつ病やPTSDなどの深刻な精神疾患を発症するリスクがあります。看護師は求人が豊富な職種ですので、新しい環境で再スタートを切ることは十分に可能です。
体調に異変を感じたら、無理をせず早めに医療機関を受診してください。「もう少し頑張れば」と我慢し続けることは、回復を遅らせる原因になります。
いじめを受けにくくするための予防策
いじめの対処法と合わせて、予防的な視点も持っておくと安心です。
コミュニケーションスキルを磨く
報告・連絡・相談を的確に行い、日頃から周囲との信頼関係を築いておくことが予防につながります。挨拶を欠かさない、感謝の気持ちを言葉にするといった基本的なコミュニケーションも大切です。
スキルアップで自信をつける
看護技術や知識を磨いて専門性を高めることで、職場での存在感が増し、いじめのターゲットにされにくくなります。研修や勉強会に積極的に参加しましょう。
職場外のコミュニティを持つ
職場だけが自分の世界にならないよう、趣味のサークルや勉強会、看護師仲間のコミュニティなど、職場外の居場所を持つことが精神的な安定につながります。

転職を決意したときに押さえておくべきポイント
いじめが原因で転職を考える場合、いくつかのポイントを押さえておくとスムーズに新しいスタートを切れます。
退職前に確認すべきこと
- 有給休暇の残日数と消化の可否
- 退職届の提出時期(就業規則の確認)
- 健康保険や年金の切り替え手続き
- 失業保険の受給条件(パワハラが原因の場合は特定受給資格者に該当する可能性あり)
転職先を選ぶ際のチェックポイント
同じようないじめに遭わないために、転職先の職場環境をしっかりリサーチすることが重要です。
- 看護師の離職率はどのくらいか
- 教育体制は整っているか
- 職場見学ができるか
- 口コミサイトでの評判はどうか
- 面接時の雰囲気はどうか
看護師専門の転職サイトを利用すれば、職場の内部情報を事前に把握できる場合もあります。コンサルタントに相談しながら慎重に選びましょう。

よくある質問(Q&A)
Q1. いじめを受けていることを上司に報告しても改善されません。どうすればよいですか?
直属の上司で改善されない場合は、看護部長や人事部門、ハラスメント相談窓口など、より上位の管理者や専門部署に相談しましょう。院内で解決が難しい場合は、労働基準監督署や弁護士など外部機関への相談も検討してください。
Q2. いじめの証拠がない場合でも相談できますか?
証拠がなくても相談は可能です。ただし、今後の対応をスムーズにするために、できる限り記録を残すことをおすすめします。日時・場所・内容・目撃者をメモに残すだけでも十分な記録になります。
Q3. いじめが原因で体調を崩した場合、労災認定されますか?
職場のいじめやハラスメントが原因で精神疾患を発症した場合、労災認定される可能性があります。認定を受けるためには、いじめの事実と疾患の因果関係を証明する必要がありますので、記録の保存と医師の診断書が重要になります。
Q4. 転職するとき、退職理由を正直に話すべきですか?
面接では「人間関係のトラブルがあった」と正直に伝える必要はありません。「より成長できる環境を求めて」「新しい分野にチャレンジしたい」など、前向きな理由に置き換えて伝えるのが一般的です。ただし、嘘はつかないように注意しましょう。
Q5. いじめをしている人に直接「やめてほしい」と伝えるのは効果的ですか?
状況によります。相手が話し合いに応じる姿勢がある場合は、冷静に「その言動は困っています」と伝えることで改善するケースもあります。しかし、関係性に大きな力の差がある場合や、報復のリスクがある場合は、第三者を介して対応する方が安全です。
Q6. 新人看護師がいじめに遭いやすいのはなぜですか?
新人は業務に不慣れでミスが多くなりがちなこと、人間関係がまだ構築されていないこと、立場が弱いことなどが理由です。ただし、新人だからいじめを受けて仕方ないということは決してありません。困ったときは早めに周囲に助けを求めてください。
まとめ
看護師の職場でのいじめは、決して珍しいことではなく、多くの方が悩んでいる問題です。大切なのは、一人で抱え込まないことと、具体的な行動を起こすことです。
記録をつける、信頼できる人に相談する、外部機関を利用するなど、できることから一つずつ始めてみてください。それでも状況が改善しない場合は、異動や転職という選択肢もあります。
あなたが安心して働ける職場は必ずあります。自分の心と体を最優先に考えて、最善の道を選んでいきましょう。


