「退職したいけど、何から始めればいいのかわからない」という看護師の方は多いのではないでしょうか。退職は人生の大きな決断であり、手順を間違えるとトラブルに発展することもあります。
この記事では、看護師が退職する際の具体的な手順を、準備段階から退職後の手続きまでステップバイステップで解説します。円満退職を実現するためのポイントも併せてお伝えしますので、退職を考えている方はぜひ参考にしてください。

退職前の準備(退職2〜3ヶ月前)
退職をスムーズに進めるためには、事前の準備が不可欠です。勢いで退職届を出す前に、以下の準備を整えましょう。
退職理由を明確にする
退職理由は、上司への報告や面談で必ず聞かれます。本音と建前を分けて考えておくことが重要です。
- 本音:自分自身の判断基準として明確にしておく
- 建前:「一身上の都合」「キャリアアップのため」「家庭の事情」など、角の立たない表現を用意する
就業規則の確認
退職の何ヶ月前までに申し出が必要かは、就業規則で定められています。一般的には1〜3ヶ月前ですが、医療機関によって異なるため必ず確認しましょう。法律上は2週間前の申し出で退職できますが、円満退職のためには規則に従うことをおすすめします。
転職活動の開始
在職中に転職活動を行うのが理想的です。転職先が決まっていれば、退職後の不安が軽減され、経済的な心配も少なくなります。転職エージェントを活用すると、面接日程の調整もサポートしてもらえます。
有給休暇の残日数を確認する
退職前に有給休暇を消化する場合は、残日数を事前に把握しておきましょう。有給休暇の取得は労働者の権利であり、退職時に消化することは法的に認められています。
退職のタイミングは、ボーナス支給日の直後が経済的にはベストです。多くの医療機関では6月と12月に賞与が支給されるため、7月または1月の退職を目標にスケジュールを組むと良いでしょう。
退職の意思表示(退職1.5〜2ヶ月前)
準備が整ったら、上司(直属の師長)に退職の意思を伝えます。このステップが最も緊張する場面ですが、ポイントを押さえれば問題ありません。
伝える相手は直属の上司(師長)が最優先
退職の意思は、まず直属の上司である師長に伝えるのが鉄則です。同僚に先に話してしまうと、噂が広まって師長の耳に入り、心証を悪くする可能性があります。
伝えるタイミングと場所
- 忙しい業務時間中は避ける
- 師長が落ち着いている時間帯を選ぶ
- 個室や面談室など、プライベートな空間で伝える
- 「お時間をいただけますか」と事前にアポイントを取る
伝え方の例文
実際にどのように伝えればよいか、例文を紹介します。
「お忙しいところ申し訳ございません。実は、一身上の都合により○月末をもって退職させていただきたいと考えております。突然のお話で恐縮ですが、ご相談させていただければ幸いです。」
退職理由を聞かれた場合は、「キャリアアップのため」「家庭の事情」など前向きまたは個人的な理由を伝えましょう。職場への不満を直接的に伝えるのは避けた方が無難です。

退職届の提出(退職1〜1.5ヶ月前)
口頭で退職の意思を伝えた後、正式に退職届を提出します。
退職届と退職願の違い
| 書類 | 内容 | 効力 |
|---|---|---|
| 退職願 | 退職したいと「お願い」する書類 | 承認されるまで撤回可能 |
| 退職届 | 退職することを「届け出る」書類 | 提出後は原則撤回不可 |
円満退職を目指すなら、まず「退職願」を提出し、承認後に「退職届」を出すのが一般的な流れです。
退職届の書き方
退職届はシンプルに記載します。以下の項目を漏れなく記入しましょう。
- 表題:「退職届」
- 提出日
- 退職日(○月○日をもって退職いたします)
- 退職理由(「一身上の都合により」が一般的)
- 所属部署・氏名・捺印
- 宛先(病院長や施設長の氏名)
提出先と提出方法
退職届の提出先は、直属の上司(師長)を通じて人事部門へ渡すのが一般的です。医療機関によって手続きが異なるため、師長に確認しましょう。
退職届は必ずコピーを取っておきましょう。提出日の記録として、万が一のトラブルに備えることができます。また、手渡しで提出した場合は、受け取りの確認を口頭でしておくと安心です。
引き継ぎ業務(退職1ヶ月前〜退職日)
退職届が受理されたら、業務の引き継ぎを開始します。丁寧な引き継ぎは、円満退職の最も重要な要素です。
引き継ぎ資料の作成
後任者がスムーズに業務を行えるよう、以下の内容をまとめた引き継ぎ資料を作成しましょう。
- 担当患者さんの情報(注意点、ケアの方針など)
- 委員会活動や係の業務内容
- 連携先(他部署・外部機関)の連絡先
- 日常業務の手順書やマニュアル
- 未完了の業務リスト
後任者への直接引き継ぎ
資料だけでなく、後任者と直接コミュニケーションを取りながら引き継ぐことが理想です。可能であれば、数日間は後任者と一緒に業務を行い、実務レベルでの引き継ぎを完了させましょう。
患者さんへの対応
受け持ち患者さんへの挨拶は、師長と相談のうえで行いましょう。不安を与えないよう、「引き続き良い看護を受けられますので安心してください」と伝えることが大切です。

退職前に済ませる手続き
退職日までに、以下の手続きや確認を済ませておきましょう。
返却するもの
- 健康保険証
- 職員証・IDカード
- ロッカーの鍵
- ユニフォーム(クリーニング済み)
- 業務用の携帯電話やPCなど
- その他貸与物品
受け取るもの
- 離職票:失業保険の申請に必要(退職後に郵送されることが多い)
- 源泉徴収票:転職先での年末調整や確定申告に必要
- 雇用保険被保険者証:転職先で提出が必要
- 年金手帳:会社が保管している場合は返却してもらう
- 退職証明書:必要に応じて依頼する
離職票は退職後10日以内に発行される規定ですが、実際には遅れることもあります。退職前に「離職票の発行時期」を人事に確認しておくとスムーズです。
退職後の各種手続き
退職後は、社会保険や税金に関する手続きが必要です。転職先がすぐに決まっている場合と、退職後にブランクがある場合で手続きが異なります。
健康保険の切り替え
退職翌日から健康保険証が使えなくなります。以下の3つの選択肢があります。
- 転職先の健康保険に加入:転職先が決まっている場合はこれが最も簡単
- 任意継続保険:退職後20日以内に手続きすれば、最長2間は前の保険を継続可能
- 国民健康保険に加入:退職後14日以内に市区町村の窓口で手続き
年金の手続き
転職先がすぐに決まっている場合は、転職先で厚生年金の手続きをしてもらえます。ブランクがある場合は、国民年金への切り替え手続きが必要です。
失業保険(雇用保険)の手続き
自己都合退職の場合、失業保険の給付開始まで原則2ヶ月の待機期間があります。退職後はできるだけ早くハローワークで求職申し込みを行いましょう。必要書類は離職票、マイナンバーカード(または身分証明書)、写真2枚、印鑑、通帳です。
住民税の支払い
在職中は給料から天引きされていた住民税ですが、退職後は自分で納付する「普通徴収」に切り替わります。まとまった金額の納付書が届く場合があるため、注意が必要です。
退職後の各種手続きについては、厚生労働省の雇用保険関連ページ(www.mhlw.go.jp・サイト終了)でも詳しく確認できます。

円満退職のためのマナーとコツ
看護師の世界は狭いと言われています。円満に退職することは、今後のキャリアにおいても重要です。
最後まで責任を持って働く
退職が決まった後も、最後の日まで誠実に業務に取り組みましょう。手を抜く姿勢は周囲に伝わりますし、プロとしての信頼を損ないます。
同僚への挨拶を忘れない
お世話になった先輩や同僚には、個別に挨拶の時間を取りましょう。菓子折りを持参するのは看護師の退職時の定番です。
SNSでの発信に注意
退職前後にSNSで職場の不満を発信するのは厳禁です。看護師の世界は人のつながりが密接なため、ネガティブな情報は思わぬところに伝わる可能性があります。
退職後も連絡が取れるようにしておく
退職後に業務上の問い合わせがくることがあります。すべてに対応する義務はありませんが、退職後1ヶ月程度は連絡が取れるようにしておくと、良好な関係を維持できます。
退職時のトラブルとして多いのが「有給休暇の消化拒否」です。有給休暇の取得は法律で保障された権利です。もし取得を拒否された場合は、労働基準監督署に相談しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 退職届はいつまでに出せばいいですか?
就業規則に従うのが基本です。多くの医療機関では1〜3ヶ月前の提出を求めています。法律上は2週間前の申し出で退職可能ですが、円満退職のためには余裕を持ったスケジュールをおすすめします。
Q2. 退職理由は正直に言わないといけませんか?
正直に言う義務はありません。「一身上の都合」で十分です。ただし、面談で深堀りされることも多いため、「家庭の事情」「キャリアアップのため」など、角の立たない理由を準備しておきましょう。
Q3. 退職日の交渉は可能ですか?
可能です。ただし、引き継ぎや後任者の確保に時間がかかる場合、当初の希望日から延期を求められることがあります。譲歩できる範囲をあらかじめ決めておくと交渉がスムーズです。
Q4. 退職金はもらえますか?
退職金制度は法律で義務付けられていないため、勤務先の規定次第です。就業規則で退職金の支給条件(勤続年数など)を確認しましょう。公立病院や大手法人は制度が整っていることが多いです。
Q5. 退職後に看護師として復帰は可能ですか?
看護師免許は一生有効ですので、いつでも復帰可能です。ブランクがある場合は、各都道府県のナースセンターが実施する復職支援研修を活用すると安心です。
まとめ
看護師の退職手順は、準備→意思表示→退職届提出→引き継ぎ→退職日→退職後手続きという流れで進みます。
各ステップを計画的に進めることで、トラブルなく円満に退職することができます。特に、就業規則の確認、引き継ぎ資料の作成、退職後の社会保険手続きは見落としがちなポイントですので、しっかり対応しましょう。
退職は終わりではなく、新しいキャリアの始まりです。この記事が、あなたのスムーズな退職と新たなスタートの一助になれば幸いです。



